• 科学で分かる犬の力

約11,200人を7.5年間追跡した大規模研究から考える「高齢者と犬の暮らし」

犬と暮らすことは、
高齢者の健康や社会参加に
どのような影響をもたらすのでしょうか。

2026年8月18日、
国立環境研究所、
東京都健康長寿医療センター、
東京大学らの研究チームから、
非常に興味深い研究成果が発表されました。

約11,200名の
地域在住高齢者を
7.5年間追跡した大規模疫学研究です。

研究では、
現在犬を飼育している高齢者は、
犬を飼育したことがない高齢者と比べて、

要介護認知症の発症リスクが48%低い

ことが示されました。

さらに、

犬と暮らす高齢者が増えた場合、
公的な医療・介護費が

4年間で約5,920億円削減される可能性

も試算されています。

これは、
高齢者と犬との暮らしについて
社会全体で考えるうえでも、
注目したい研究結果です。


約11,200人を7.5年間追跡した研究

今回の研究では、

11,224名の自宅で暮らす高齢者

を7.5年間追跡しました。

参加者を、

  • 現在、犬を飼育している

  • 過去に犬を飼育していた

  • 犬を飼育した経験がない

の3つのグループに分け、

要介護認知症の発症や
死亡との関連を調べています。

研究ではさらに、
観察研究で生じやすい
「もともと健康だから犬を飼えるのではないか」
といった影響をできるだけ小さくするため、

操作変数解析

という統計手法を用いて
犬の飼育と認知症発症との関連を検討しています。

その結果、

現在犬を飼育している高齢者では、
犬を飼ったことがない高齢者と比較して、

要介護認知症の発症リスクが48%低い

ことが示されました。

研究チームは、

犬との暮らしが認知症発症を抑制する可能性を示す結果

としています。


4年間で約5,920億円。医療・介護費にも注目

今回の研究でもう一つ
大きく注目されるのが、

医療・介護費への影響

です。

研究チームは、
犬と暮らす高齢者が増加し、
犬の飼育率が13.4%になった場合を想定して
予算影響分析を行っています。

その結果、

公的支払者の視点では、

医療・介護費が4年間で約5,920億円削減される

という試算になりました。

一方で、
犬と暮らすためには、

フード、医療、
お手入れ、生活用品など、
家庭からの支出も必要です。

これらを含めた
社会全体の追加費用は、

4年間で約4.63兆円

と試算されています。

つまり今回の研究は、

「犬を飼えば5,920億円がそのまま節約できる」

という単純な意味ではありません。

犬との暮らしによって
犬関連の家計支出が増える一方で、

医療や介護などの
公的支出については
節減につながる可能性が示された、

という研究です。


なぜ「犬との暮らし」が注目されるのでしょうか

私たちが特に注目したのは、
研究の「今後の展望」です。

国立環境研究所の発表では、

犬との暮らしそのものだけでなく、

犬の散歩や地域交流など、犬との生活を通じて生まれる健康行動

についても、
今後の認知症予防施策や
健康寿命延伸への活用が期待されています。

犬との生活には、

「朝だから散歩に行こう」

「ごはんをあげよう」

「今日はお手入れをしよう」

「犬友達に会ったから話をしよう」

そんな小さな日常があります。

犬と暮らすことで、
外へ出る理由が生まれる。

歩く機会が生まれる。

人と挨拶をする。

地域の人と話す。

毎日の役割が生まれる。

こうした一つひとつの積み重ねも、
高齢者と犬との暮らしを考えるうえで
大切な視点ではないでしょうか。


でも、「高齢者は犬を飼えばいい」ではありません

今回の研究結果を見て、

「それなら、高齢者は犬を飼った方がいい」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、
私たちドッグセラピージャパンは、
そう単純には考えていません。

犬は健康器具でも、
認知症を予防するための道具でもありません。

一頭の命です。

犬を迎える以上、
その犬の生涯について
考える必要があります。

高齢になってから
犬との暮らしを考える場合には、

「自分が入院したら、この子はどうなるのだろう」

「散歩が難しくなったらどうしよう」

「病気になった時、世話を続けられるだろうか」

「自分にもしものことがあったら」

「家族に負担をかけないだろうか」

「犬の医療費を払い続けられるだろうか」

そんな不安もあります。

だからこそ必要なのは、

犬を飼うことを勧めることではなく、
犬と安心して暮らし続けられる環境をつくること

だと私たちは考えています。


高齢だから、犬との暮らしをあきらめなくてもいい社会へ

ドッグセラピージャパンには、

「犬と暮らしたいけれど、
自分の年齢を考えると不安」

というご相談があります。

私たちが大切にしているのは、

年齢だけで、犬との暮らしをあきらめないこと。

でも同時に、

勢いだけで犬を迎えないこと。

です。

年齢だけではなく、

現在の生活、

体力、

住まい、

家族や周囲の協力、

犬にかけられる時間、

経済的な負担、

入院した時のこと、

そして、もしもの時のこと。

一つずつ確認しながら、
犬との暮らしを考える必要があります。


子犬だけが選択肢ではありません

犬との暮らしは、
必ずしも子犬から始める必要はありません。

子犬には、
子犬から育てる楽しさがあります。

一方、成犬には、

性格や生活リズム、
人との距離感などが
比較的分かりやすいという特徴があります。

特に高齢の方の場合、

「小型犬だから大丈夫」

「子犬だから長く一緒にいられる」

ということだけではなく、

その犬の性格と、その方の暮らしが合うか

を考えることが大切です。

犬種や見た目だけではなく、

運動量、

性格、

お手入れ、

人との距離感、

生活環境との相性。

犬と人の双方が
無理なく暮らせることを
一緒に考えていく必要があります。


「もしも」の時まで考えることが、犬を守ることにつながる

高齢者と犬との暮らしを
社会全体で広げていくためには、

犬を迎える時だけではなく、
その後を支える仕組みも必要です。

例えば、

入院した時に相談できる場所。

一時的に犬を預けられる環境。

日々のお手入れを相談できる場所。

犬の食事や健康について相談できる場所。

そして、

飼い主に万が一のことがあった時、
犬のこれからを相談できる場所。

こうした支援があれば、

「もう高齢だから」

という理由だけで
犬との暮らしをあきらめなくてもよい人が
増えるかもしれません。

同時に、

飼い主の病気や入院などによって
犬が突然行き場を失うことを
防ぐことにもつながります。


人の健康だけではなく、犬の幸せも

今回の研究は、
犬との暮らしと
高齢者の健康について考える
非常に重要な研究です。

しかし、
私たちが忘れてはいけないのは、

犬にも感情があり、生活があり、一生がある

ということです。

人が健康になるためだけに
犬を迎えるのではありません。

犬にとっても、

安心して眠れること。

適切な食事があること。

必要な医療を受けられること。

無理なく散歩できること。

嫌なことを無理強いされないこと。

そして、

最後まで大切にされること。

これらが守られなければなりません。

ドッグセラピージャパンが目指しているのは、

人だけが幸せになる社会でも、
犬だけを守る社会でもありません。

犬が人を支え、
人も犬を支える。

そんな関係です。


ドッグセラピーの現場でも感じてきた「犬がつなぐもの」

私たちは、
高齢者施設へのドッグセラピー訪問を通じて、

犬をきっかけに
さまざまな交流が生まれる場面を
見てきました。

ある高齢者施設では、
普段ほとんど言葉を発しなかった方が
セラピードッグを膝に乗せ、

犬の背中をゆっくり撫でながら、

「昔、飼っていた子にそっくりだ」

と話されたことがありました。

犬が何か特別なことを
したわけではありません。

ただ、
その方のそばにいました。

犬をきっかけに、
過去の思い出が語られ、
そこから人と人との会話が生まれる。

私たちは、
そんな場面を何度も見てきました。

※これはドッグセラピージャパンの活動中に確認した個別の事例です。認知症の改善など、医学的な効果を示すものではありません。


高齢者福祉 × 動物福祉 × 地域づくりへ

今回の研究は、

「犬と暮らすこと」

を、個人だけの問題ではなく、

高齢者福祉や健康政策、地域社会という視点から考えるきっかけ

にもなるのではないでしょうか。

犬との散歩によって
地域を歩く。

犬をきっかけに
人と話す。

犬のお世話という
毎日の役割を持つ。

そして、

困った時には
地域や支援者とつながれる。

これからの超高齢社会では、

「犬を飼ってよいか、いけないか」

だけではなく、

どうすれば高齢になっても、
人と犬の双方が安心して暮らせるのか

を考えることが
ますます重要になっていくと思います。


高齢だから、犬との暮らしをあきらめない

今回の研究では、

犬と暮らしている高齢者で
要介護認知症の発症リスクが低い可能性が示され、

さらに、

犬と暮らす高齢者が増えることによる
公的な医療・介護費への影響についても
大きな可能性が示されました。

ただし、

「犬を飼えば認知症にならない」
という研究ではありません。

そして、

誰にでも犬との暮らしを
勧めるものでもありません。

大切なのは、

犬と暮らしたい人が、
年齢だけを理由にあきらめなくてもよいこと。

その一方で、

犬の一生にも責任を持てるように、
迎える前から将来まで考えること。

そして、

一人で抱え込まずに
相談できる場所や仕組みを
社会の中につくっていくことです。

犬と一緒に、少しでも長く。

犬が大好きなすべての人が、
安心して犬との暮らしを考えられる社会へ。

ドッグセラピージャパンも、

人と犬の双方が幸せに暮らせる環境を
これからも考え、つくり続けていきます。


研究について

発表日
2026年8月18日

発表機関
国立研究開発法人 国立環境研究所
東京都健康長寿医療センター

研究タイトル
Investigating the Potential Protective Effect of Dog Ownership on Incident Disabling Dementia and Its Cost-Effectiveness

掲載誌
International Journal of Environmental Research and Public Health

国立環境研究所 公式発表
「犬と暮らす高齢者が増えると4年間で約5,920億円の公的支出削減」公式発表を見る

発表論文
International Journal of Environmental Research and Public Health掲載論文を見る

DOI:10.3390/ijerph23070938


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犬と暮らす高齢者は認知症リスク48%低い可能性|約11,200人の研究から考える高齢者と犬|ドッグセラピージャパン

メタディスクリプション

約11,200名の高齢者を7.5年間追跡した研究で、犬を飼育している高齢者は要介護認知症の発症リスクが48%低いことが示されました。さらに犬と暮らす高齢者が増えた場合、公的な医療・介護費が4年間で約5,920億円削減される可能性も。研究結果から、高齢者が犬と安心して暮らし続けられる社会についてドッグセラピージャパンが考えます。

推奨URL

/blog/senior-dog-dementia-study-2026/

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犬と暮らす高齢者
認知症発症リスク48%低い可能性

約11,200人・7.5年間の大規模研究

医療・介護費
4年間で約5,920億円削減の可能性

※国立環境研究所ほか研究チーム発表